魔力甚大なる紫眼の竜の子孫が治めるヴァール・ドゥナ。地底にあるこの国きっての貴族・ヴァリドゥー家の姫・ヴィアーナは今年で18歳。肌は白く、髪も眉も、睫毛や瞳、ふくよかな唇も純度の高いルビーが溶けて流れ出したような深い真紅だった。彼女の兄・ハディールは地底世界の存在を知らしめるため、真紅の鷹に姿を変じては地上の人間を脅かす怖ろしい男だが、ヴィアーナにとってはこの上なく優しい兄、そして愛する男だった…。ある日、街に出たヴィアーナは謎の宮廷魔術師・モスリーに出会う。漆黒を纏った彼は、ヴィアーナを自分の恋人・エリンであると言うのだが…。